赤げふの数学

数学・物理・微分の大学2年生 赤げふのBLOG

交換子の公式の準備

こんにちはー(`・ω・)b

 

Fractional Fourier Transform(FrFT,分数階フーリエ変換)の微分作用素の表示

(りんく)

の下準備としてこの記事を書きます。

 

微分作用素の交換子の計算をLie括弧積をつかって色々やります

 

微分作用素とは、正則関数間の変換を与える線形作用素で、

形式的冪級数 \displaystyle f(x)=\sum_{k=0}^{\infty} f_k (x-a)^{k}

 \displaystyle \sum_{k=0}^{\infty} (k+1)f_{k+1} (x-a)^{k}に変換する

ものである。冪級数の係数のみを取り出し(f_0 ,f_1 , \cdots )^{t}のように

表すと無限次元複素ベクトル空間の元と対応するが、微分作用によって

(f_1 ,2f_2 ,\cdots )^{t}と変化するので微分作用素\dfrac{d}{dx}

行列(l\delta_{k,l-1})_{k,l\in \mathbb{N_{0}}}という無限次元行列と見なせる。

この行列を介して微分作用素の指数関数を自然に導入できる。

幾つかは既に記事としてあります。


 (クソ古い記事)

akaghef.hateblo.jp

Lie括弧積の計算についてみていきましょ〜

[定義] 次を満たす線型空間上の双線型形式[ー,ー]をLie括弧積と言う。

 [ X,Y] =-[ Y,X]

[X,[ Y,Z ] ] +[ Y,[ Z,X ] ]+[ Z ,[X,Y] ] =0 (Jacobi恒等式)

 

複素数の形式的冪級数A=\mathbb{C} [ [ x] ]線型空間で、そこに微分作用素\mathcal{D}=d/dxを付加えて交換子[X,Y] =XY-YXを計算できる。

交換子の公式についてはここを参照してください〜

 

physnotes.jp

以後使う公式はここから出します。

 ad(X)・Y=ad_X(Y)=[ X,Y ]Ad(X)・Y=Ad_X(Y)=XYX^{-1}と書く。

混乱の無いようa,bスカラーでどの元とも可換に計算できる、f,gは関数と定めておく。

記法上の注意だが、\mathcal{D}f(x)\mathcal{D}・f(x)をドット積"・"で厳密に区別する。

前者は作用素で、関数g(x)に作用させると

(\mathcal{D}f(x))・g(x)=\mathcal{D}・(f(x)g(x))=f'(x)g(x)+f(x)g'(x)

と計算される。後者はただの微分\mathcal{D}・f(x)=f'(x)である。

関数値やスカラーのドット積はその値をそのまま掛けると定めるf(x)・g(x)=f(x)g(x)

微分Leibniz則に従うので\mathcal{D}・(f(x)g(x))=f(x)\mathcal{D}・g(x)+(\mathcal{D}・f(x))・g(x)となるが

(\mathcal{D}f(x)-f(x)\mathcal{D})・g(x)=f'(x)・g(x)

より作用に関して[ \mathcal{D},f(x) ] =f'(x)が成立。

特にf(x)=xとして

[1] [\mathcal{D},x]=1                          

を導く。、量子力学では、正準交換関係(CCR)の数式として登場する。次\mathcal{D}の指数関数は量子力学の平行移動の演算子として登場する。

[2] e^{a\mathcal{D}}・g(x)=g(x+a)

同様に変数変換してやると、並進演算子

[3] a^{x\mathcal{D}} ・g(x)=g(ax)

が出る。q-derivativeと差分が、Lie環・群の対応のように結びつく。

 [1]より特に[\mathcal{D},[\mathcal{D},x]]=[x,[\mathcal{D},x]]=0であるので

 [参照]よりe^{ax+b\mathcal{D}}=e^{\frac{1}{2}ab}e^{ax}e^{b\mathcal{D}}

と計算できる。

 x\mathcal{D} はEuler作用素などと呼ばれるが、x=e^{t}と変数変換してやればx\mathcal{D}=\frac{d}{dt}である。またJordan積はA\circ B=\frac{AB+BA}{2}という記法もあり、x\circ \mathcal{D}=x\mathcal{D}+\frac{1}{2}は対称性を重視する際よく出てくる。

ここまでxと\mathcal{D}の複合された数式を幾つか見ましたが、一般の等号の成立の条件を実はよく理解していません。というのは\mathcal{D}は元々は無限次元の作用素であり有界でないので、Hillbert空間の論法も通じず、非可換なので行列式等も複雑になる代数なので、一般の性質を探るのは専門家以外無理なんじゃないでしょうか(もし扱ってる書籍あれば知りたい)

とはいえ、Segal-Shale-Weil表現のような良い構造を持つのは確かで、テストに追われてて時間ないので厳密な構成については省き、今の所病的でない素性の良いものだけを取り扱います。

線形代数の教科書を参照する。(有限次元に関するものだが)

一般に作用素\mathcal{T}固有値\lambdaに対応する固有関数fについて、

作用素\mathcal{T}を行列として表し\det T\lambdaの2つがともに冪級数Pの収束円内に入るなら、P(T)・f=P(\lambda)fと計算される。

形式的には \displaystyle \sum_n a_n x^{n}と冪級数展開された関数を\sum_n a_n P(n)x^{n}に変換したいとき、作用素x\mathcal{D}固有値mに対応する固有関数はkx^m(k\in \mathbb{C})となることから、変換を与える作用素P(x\mathcal{D})と分かる。

\dfrac{1}{x}は形式的冪級数の次数を1下げる作用素として機能するので、\mathcal{[[ \dfrac{1}{x}]]}作用素の因子に含んでいても問題ない。しかし

\mathcal{D}^{-1}については解析的に全て都合よく表すことは出来ないため、

微分作用素として代数的に扱うことが望ましい。

非整数階数の微分を考えることがRiemann-Liouville作用素として積分変換の形で導入されている

\mathcal{D}^{-\alpha}:g(x)\rightarrow \dfrac{1}{\Gamma(\alpha)}\int_{0}^{x} (x-t)^{\alpha}g(t)\dfrac{dt}{t}

これは加法性、つまり\mathcal{D}^{-\alpha}\mathcal{D}^{-\beta}=\mathcal{D}^{-(\alpha+\beta)}を満たす。

 

微分環がLie環と強く関連することを述べる。

(F,\partial)微分環とするとF\partialはLie環である。これはLeibnitz則を使うとf\partial,g\partial,h\partial \in F\partialについて

[f\partial,g\partial] =f\partial g\partial-fg\partial^2+gf\partial^2-g\partial f\partial

=f(\partial g-g\partial)\partial-g(\partial f-f\partial )\partial=(fg'-f'g)\partial

[[f\partial,g\partial] ,h\partial ]=[(fg'-f'g)\partial ,h\partial]=((fg'-f'g)h'-(fg''-f''g)h)\partial

を巡回的に足しあげると

[[f\partial,g\partial] ,h\partial ] +[[g\partial,h\partial] ,f\partial ] +[[h\partial,f\partial] ,g\partial ] =0

をみたすのでJacobi恒等式が満たされるのでF\partialはLie環である。

 [\partial ,f]=f'として数体Kから関数の集合Fをつくり、微分(F,\partial)からLie環K\partial\oplus F を組み上げる事も出来て、

[[\partial,f],g]=[[f,g],\partial]=[[g,\partial ]f]=0

より結合的なLie括弧積が出来上がる。

 

 雑多な内容になりましたが、続く記事の準備としたいと思います。

多分あとから更新して内容加えていくと思います。

 

 では(^^)/